キヤノンは新型の薄型表示装置、SED(表面電界ディスプレー)を搭載した家庭用テレビの開発を凍結する方針を固めた。液晶やプラズマに対抗する薄型テレビとして商品化を目指していたが、テレビ市場の価格下落の勢いに製造コスト低減が追いつかないと判断した。今後は、高精細で消費電力が低いSEDの特長を生かし、業務用の開発に力を入れる。
SEDはブラウン管と同じ原理で画面に映像を表示する。ブラウン管は1本の電子銃で映像を映すが、SEDは無数の微細な電子銃を平面に配置する。消費電力を抑えつつ高画質を実現できるが、低コストの量産技術の確立が困難とされていた。
キヤノンは1999年に東芝とSEDの共同開発に着手。2004年に両社の折半出資でSEDの開発・生産会社を設立し、薄型テレビ市場への参入を表明した。
しかし、量産技術の開発が難航。SED技術を持つ米国企業から特許関連訴訟も起こされ、商品化時期を何度も延期してきた経緯がある。キヤノンは東芝との折半出資会社を完全子会社化してSEDテレビの商品化の道を探っていたが、競争が激しい家庭用テレビでは採算がとれないと判断した。
SEDの量産技術開発は継続し、画像診断機器や教育向け機器など業務用ディスプレーとしての用途開発を目指す。
日経新聞
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