2010年7月5日月曜日

米小売り大手、都心に小型店 ウォルマートやベスト・バイ

 米小売り大手が小型店や都心型店舗の出店を相次ぎ加速する。最大手ウォルマート・ストアーズが大都市でのチェーン展開に参入するほか、高級百貨店大手ノードストロームも格安商品を扱う業態を増やす。倹約志向の定着を踏まえ、伝統的な郊外大型店の展開を見直し、消費者が低価格品を手軽に買える店を増やして収益力の強化を図る。商業用不動産相場が依然軟調で、好立地に進出しやすいことも背景にある。

 ウォルマートはシカゴでディスカウント店のチェーン展開を始める。6月末に市議会が出店を認めたのを受け、同市内に5年間で数十店を展開する計画だ。ニューヨークやロサンゼルスなどほかの大都市への本格参入も検討している。

 「スーパーセンター」と呼ばれる郊外の大型店を中心に全米約4300店を展開する同社にとって、大きな路線転換。米国内で既存店売上高の前年割れが約1年続いているため「小規模な店舗を多く開く」(デューク最高経営責任者)ことで局面の打開を図る。

 ノードストロームは、アウトレット店「ノードストローム・ラック」を新規出店の主軸に据える。2011年1月期に出店を計画する19店のうち16店を同業態とする。

 シーズンオフの商品や在庫処分品を扱い、主力の高級店「ノードストローム」より価格設定が最大7割程度安い。消費者の倹約志向を映して客足は好調。売り場面積は高級店の3分の1から4分の1だが、都心出店の目玉と位置付ける。

 米国に約1200店を展開する家電量販最大手ウォルマートは年末までに、小型店「ベスト・バイ・モバイル」を最大100店新設する。携帯端末の販売に特化した新業態で、現在は約80店。同社は米アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)」などを扱っており、携帯電話は売上高が年率1割強伸びている収益分野。将来的には1000店前後に増やすという。

 こうした新業態は、従来型店舗より投資額を抑えられる利点がある。全米で商業用不動産の市況が軟調なことも、財務余力のある小売り大手には追い風。全米でショッピングセンターからテナントが撤退する流れが続き、空室率が上昇する一方、不動産価格や賃料は低下傾向にある。

 不動産調査大手のリースによると、米国の主要ショッピングセンターの空室率は10年3月末時点で平均10.8%。直近の底だった05年夏(6%台)からほぼ一貫して上昇している。出店に前向きな企業にとって、人口密集地域や交通の便がよい好物件を選びやすい環境になっている。

 小売り大手が空き物件への進出を加速すれば、商業用不動産の価格が大都市を中心に底入れし、金融機関の商業用不動産向けローンの焦げ付きも減少する可能性がある。

日経新聞
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