大日印は小学館や新潮社、文芸春秋など出版各社に協力を要請した。このうち講談社は「作品提供に応じたい」(野間省伸副社長)としており、岩波書店も前向きに協議に応じる考えだ。
大日印は出版社に対し、傘下の書店と電子書籍サイトの販売データを提供、データ分析から電子書籍の企画や販売方法まで指南し、作品供給を促す。電子書籍を巡っては著作権者の了解や収益分配方法などの課題もあるが、2011年中には販売点数を30万点に増やしたい方針だ。
電子書籍はまず、米アップルの多機能携帯端末「iPad(アイパッド)」や携帯電話、パソコン向けから手掛ける。ソニーなど国内メーカーが年内にも投入する電子書籍端末にも配信先を順次広げていく。
各作品の価格は出版社の希望を踏まえて決めるが、紙の書籍より安い商品が多くなるとみられる。利用料金はサイト入会時に登録するクレジットカードや電子マネーなどで決済する。
電子書籍の普及に向け、傘下の丸善、ジュンク堂書店(神戸市)、文教堂グループホールディングスとの連携も強化する。3社と共同で、紙の書籍と電子書籍で共通に獲得できるポイントを導入する。そのために3社共通で使える会員カードを11年上期にも発行する。1つの会員IDで、電子書籍サイトと、傘下企業が運営する書籍通販サイト「bk1」も利用できるようにする。
会員や在庫の情報を、書店と電子書籍サイトなどで共有。会員が電子書籍サイトから書籍の在庫状況を調べ、店頭で受け取れるサービスも始める。購入履歴をサイト上で確認することもでき、履歴を基に会員の好みにあった商品も推奨できるようにする。
店舗の顧客と電子書籍の消費者を相乗効果で増やし、不振が続く書店経営の立て直しにもつなげたい考えだ。
大日印は今後2~3年で、新サイト開設や電子書籍のデータ制作工程、bk1の強化などに300億円を投資する。傘下3書店チェーンの年間売上高は直近で1700億円規模。5年後には電子書籍関連で売り上げ500億円を目指しており、書籍通販も合わせ、書籍流通事業の年間売上高を2500億円規模に拡大する計画だ。
日経新聞
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