韓国銀行(中央銀行)が27日発表した1~3月期の実質国内総生産(GDP)の伸び率は前期比1.8%となり、年率換算で7%強を確保した。景気の改善基調は一段と鮮明になっているが、中国やインドなど高成長国向けが好調な輸出とは対照的に、内需の足取りは重い。韓国経済が持続的な成長軌道に乗るには、潤う外需の国内波及が不可欠で、賃金増や投資拡大が今後の焦点になりそうだ。
1~3月期の輸出額(通関ベース)は中国向けが前期比4.5%増、インド向けも同5.6%伸びるなど、対新興国が軒並み好調だった。低迷していた米国向けも同5.1%増と回復。輸出全体のGDPへの寄与度は1.2ポイントとなった。
一方、民間消費の寄与度はわずか0.3ポイント。1~3月期の国内自動車販売は35万台と前期比2割も落ち込んだ。税金を減免する政府の支援策が昨年末に切れたのが響いた。地方都市では住宅の売れ残りが増加。政府は建設業者救済のため年内に5兆ウォン(約4200億円)を投入、4万戸の買い入れを決めた。
韓国のマクロ経済指標は主要国に先行して急ピッチで改善してきたが、賃金増には結びついていない。むしろ昨年の全産業ベースの賃金は前年比 0.5%減と2000年代で初のマイナスとなり、個人消費の重荷になっている。
外需主導で収益が好調の企業の中では最近、LG電子などで賃上げが決まった。ただ韓国経営者総協会は「好況を享受しているのは一部の大企業だけ」と指摘。「雇用安定優先で今年の賃金は据え置きが適当」と家計の所得増が広がる気配は乏しい。今年の採用計画も大企業が3%増の半面、中小は18%減と格差がある。
背景には大企業を基点にしたマネーの流れがまだ滑らかではないことがある。上場企業(12月期決算の553社)の現金などの手元流動性は、昨年末で計84兆7300億ウォンと前年比2割も増えた。営業活動で生み出したお金を使わずに、経営環境の悪化に備えて財務改善を優先したためだ。
その結果として企業の投資やM&A(合併・買収)の余力は高まった。主要600社は今年の設備投資を前年比16.9%増の103兆2000 億ウォンとする方針。これが計画通りに実行されれば、幅広い産業や家計への波及効果が生まれる可能性がある。
ただサムスンやLGグループは従来、国内の基幹工場に投資の多くを振り向けていたが、来年以降は中国での液晶パネル工場新設など国外への資金投下が増える。現代自動車と傘下の起亜自動車も販売増の大半を米国やインドなどの工場での生産で賄っており、今後の投資は海外に集中する見通し。韓国を代表するグローバル企業の好業績や積極戦略が、必ずしも内需押し上げには直結しない構造も生まれている。
日経新聞
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