IT(情報技術)大手の米ヒューレット・パッカード(HP)は28日、携帯電話端末メーカーの米パームを 12億ドル(約1130億円)で買収すると発表した。パームはスマートフォン(高機能携帯電話)が主力だが、販売低迷により業績が悪化していた。HPはパームの開発力と自社の生産・販売力を組み合わせ、スマートフォン市場で勢力拡大を目指す。
HPはパーム株主に対して、パーム1株あたり5.70ドルの現金を支払う。28日の通常取引でパーム株の終値は4.63ドルだった。買収手続きは7月末までに完了する。
パームは1990年代に携帯情報端末(PDA)を人気商品に育てた。現在は独自開発の基本ソフト(OS)「ウェブOS」を搭載したスマートフォンが一定の評価を得ているが、「ブラックベリー」を手掛けるカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)や「iPhone(アイフォーン)」の米アップルなどに大きく引き離されている。
HPはすでに米マイクロソフトのOSを搭載したスマートフォンを販売しているが、世界シェアは下位にとどまっている。パソコンの販売台数で世界首位の同社は効率的な生産体制や世界規模の販売網を築いており、パームの開発力や知的財産を活用してスマートフォン市場で巻き返す。
同日のアナリスト向け電話会見でHPのトッド・ブラッドリー上席副社長は「スマートフォン市場は1000億ドルを超え、さらに年率20%以上のペースで拡大している」と指摘。さらに「スマートフォン以外の機会も探っている」としてパームのOSを携帯情報端末などにも搭載する方針を示した。
米調査会社のガートナーによると、2009年の携帯電話の世界販売台数は前年比1%減の12億1100万台だった。景気悪化などの影響により市場全体が縮小する一方、スマートフォンは24%増の1億7200万台と好調を維持した。スマートフォンは通常の携帯電話に比べて単価が高く採算性に優れるため、電機・IT各社が強化分野に据えている。
日経新聞
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