中国での生産や中国向け輸出が急拡大するなか、中国政府が1ドル=6.8元台で事実上固定している人民元の切り上げ観測に関しても、企業は神経質になっている。決算短信には業績や株価に影響を及ぼす可能性のあるリスクを「事業等のリスク」として記すが、日立建機などここで元について言及する企業が目立っている。
丸紅と伊藤忠商事が出資する通販会社、スクロールは通販で取り扱う衣料品を中国から輸入しているが、元高が進むと中国工場で人件費や材料費などのコストが増える。「元高傾向が続く場合、中国生産商品の原価上昇につながると考えられ、当グループの利益率低下が予想される」と事業等のリスクに記した。
ヤマハは中国国内に4工場を持つ。このうち電子楽器や管楽器などピアノ以外の製品の9割を米国などへ輸出しており、「人民元が対ドルで上昇すると収益への影響は避けられない」(高橋源樹取締役)。円相場を一定とした場合、元がドルに対して10%切り上がれば、営業利益が年8億円目減りする。
逆に元高がプラスに働く企業もある。ユニ・チャームの中国拠点は海外から原材料を調達しておむつを生産、中国国内で販売している。このため「緩やかな元高なら、中国工場で使う原材料費が安くなり収益にプラスになる」(秋田泰執行役員)という。
対ドルで元が切り上げられた場合、円も対ドルでつれ高するのではないかと懸念する声も多い。セイコーエプソンの碓井稔社長は「(円のつれ高)リスクは多少あるだろう」と指摘。TDKの上釜健宏社長は「元切り上げの影響を社内でシミュレーションさせている」と話した。
日経新聞
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