2011年8月19日金曜日

米HP、パソコン事業分離を検討 企業・官公庁向けに集中


米IT(情報技術)大手のヒューレット・パッカード(HP)は18日、パソコン事業の分離を検討すると発表した。同社は世界のパソコン市場で約2割のシェアを握る最大手だが、市場の成熟化や多機能携帯端末などとの競争激化で事業の抜本的な見直しが必要と判断した。最大手の戦略転換は日本勢を含む世界のパソコンメーカーに大きな影響を与えそうだ。

 分離の形態は未定だが、会社分割による別会社化などを軸に検討を進める見通し。既に取締役会の承認を得ており、今後12~18カ月程度の間に結論を出すとしている。同日の電話会見でHPのレオ・アポテカー最高経営責任者(CEO)は「パソコン市場は大きく変わっており、柔軟性が高い事業形態が必要」などと説明した。

 HPは2002年に米コンパック・コンピューターと合併し、パソコンで世界一に躍り出た。米調査会社IDCによると、10年の世界出荷台数は6421万台で、シェアは18.5%。10年10月期のパソコン事業売上高は407億ドル(約3兆1200億円)で売上高の3割強を占めた。ただ売上高営業利益率は5%と、15%以上のITサービスなどに比べて大きく見劣りしていた。

 HPのパソコン事業を巡っては今年に入ってから、韓国のサムスン電子による買収観測が流れたこともある。HPは事業の分離に関して詳細を明らかにしていないが、今後の展開次第ではアジア企業による買収など大規模な業界再編につながる可能性もありそうだ。

 世界のIT企業では米IBMが05年にパソコン事業を中国のレノボ・グループに売却したほか、NECも今年、レノボと事業統合した。パソコンは汎用品化の進展とともに利益が出にくい商品になっている。スマートフォン(高機能携帯電話)など新たなIT機器がネット接続機器の主役になりつつあり、世界最大手の事業分離は「パソコン時代の終焉(しゅうえん)」の象徴といえそうだ。

日経新聞