2010年12月15日水曜日

中国進出企業「賃金2ケタ上昇」4割 本社10年度調査 2ケタ増益も4割

日本経済新聞社が14日まとめた「中国進出日本企業アンケート」で2010年度の中国での賃金水準が昨年度比で10%以上上昇した企業が4割に達した。一方で4割の企業が今年度の中国事業の2ケタ増益を見込み、11年度の設備投資も約46%が増やす意向を示した。コスト増や日中関係の行方の不透明さなどの逆風を受けながらも、引き続き中国を収益源として重視する姿勢が浮き彫りとなった。

 中国進出企業アンケートは中国大陸に進出している有力製造業・サービス業136社を対象に11月下旬に実施。101社の回答を得た。

 日本企業が賃上げの目安としてきた中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は1~11月で前年同期比3.2%。これを上回る5%以上の賃上げを実施した企業が58.4%にのぼり、うち10%以上は40.6%に達した。製造業・サービス業を問わず幅広い業種で賃金水準が上昇した。

 従来、中国の日系企業は欧米系に比べ賃金水準が低く、上昇ペースも遅いとされてきたが、様相が変わりつつある。上海の大手人材派遣会社の調査でも10年度の上海の日系企業の賃金上昇率は9.8%で、8%台の欧米系や中国系を上回る。

 中国での外資の労務問題に詳しい米大手法律事務所ジョーンズ・デイの陶景洲パートナーは「日系企業の賃金水準は欧米系に比べまだ2~3割以上低い。中国政府も消費拡大へ所得増を後押しする姿勢を示しており、人材を確保するためにも日系はさらに賃上げを迫られるだろう」と分析する。

 中国では今夏以降、賃上げを求める従業員のストライキが相次いだ。今回の調査でも2割が自社や取引先でのスト発生で影響を受けたと回答。スト未発生の企業でも賃金上積みや特別一時金支給、福利厚生の改善など予防措置をとる動きが目立った。CPI上昇率は11月には前年同月比5.1%と2年4カ月ぶりの高水準に達し、11年も賃上げ圧力はさらに強まるとみられる。

日経新聞