2012年3月21日水曜日

キヤノン、合理化を加速 4年で4000億円以上コスト削減

キヤノンは2012年12月期から4年間で、4千億円以上のコストを削減する。欧州景気や為替など経営環境の先行き不透明感が強いため、従来計画より合理化を加速する。デジタル一眼レフカメラ用レンズ工場で自動化に踏み切るほか、製品開発の効率化にも着手。収益基盤を強固にし、15年12月期の売上高営業利益率を20%以上(前期は11%弱)に引き上げる。

 円高は足元で一服傾向にあるが、会社側は現時点で今期に前期比1000億円強の営業減益要因になるとみている。価格面でも競争激化による値下げで約1100億円の収益が圧迫されるほか、主力販売地域の欧州でも景気減速懸念が出ている。

 こうした環境悪化を受け今期以降、最低でも年1000億円以上のコストを減らす。昨秋時点で、同社の4年間のコスト削減額は3千億円以上になるとみられていたが、実際は1000億円程度上積みされそうだ。15年12月期の売上高原価率は、昨秋時点で目標としていた45%(前期は51%強)よりさらに改善しそうだ。

 ロボットなどを使った自動化が合理化の主軸となる。人手による作業の削減で生産効率の改善と固定費圧縮を目指す。

 具体的には、事務機用トナーで導入を拡大するほか、一眼レフカメラ用交換レンズでも導入を検討する。自動化は生産数が多い製品ほど有効。同レンズの直近1年間の生産数は1千万本以上とみられ、トナーと並び自動化による効果が大きいと判断した。

 現在、導入するロボットの種類や自動化の工程など具体的な仕組みを試作している段階で、まず主力の宇都宮工場への導入を目指す。同工場の運用結果に応じて東南アジアなど海外工場にも広げる可能性がある。

 研究開発も効率化する。3次元CAD(コンピューターによる設計)を使い設計段階から不具合検査などを徹底。デジタルカメラやプリンターなどの分野で、開発コストの多くを占める試作品の生産台数を抑制する。同時に開発期間の短縮や部品の共通化なども進める。

 同社は15年12月期の売上高(米国会計基準)を前期比41%増の5兆円以上、営業利益を2.6倍の1兆円以上に伸ばす計画。震災や円高、景気減速などの影響で足元の進ちょくは遅れているが、一段の合理化で計画達成に弾みをつける考えだ。

日経新聞