2011年5月27日金曜日

ソニー、今期は4期ぶり最終黒字へ

 ソニーは26日、2012年3月期の連結最終損益が800億円の黒字(前期は2595億円の赤字)の見通しだと発表した。最終黒字は4期ぶり。東日本大震災の影響と配信サービスからの情報流出の対策費用約140億円が減益要因となるが、テレビを中心にコストを削減。将来の利益を見込んで計上していた繰り延べ税金資産の取り崩しがなくなることも寄与する。

 売上高は4%増の7兆5000億円、営業利益は横ばいの2000億円の見通し。

 今期の収益を下支えするのは、前期から続く原価低減やリストラ費用の減少だ。前期のエレクトロニクス部門の営業利益の増減要因のうち、原価低減やリストラ費用の減少は2307億円。増収効果の約2倍に上る。今期も震災の影響で売り上げが伸び悩み、この傾向が続きそうだ。

 今期のコスト削減の中心はテレビ事業。固定費や液晶パネルなどの材料費の削減に取り組む。前期の同事業は750億円の営業赤字(前の期は730億円の赤字)と7年連続で赤字。今期も「黒字化は難しい」(加藤優最高財務責任者=CFO)が、赤字幅を削減する方針だ。

 リーマン・ショック後に取り組んだ工場売却や人員削減により、バランスシート改革は他の家電各社に先行する。繰り延べ税金資産を前期に約3600億円取り崩したことで、今後の取り崩しリスクが軽減された。

 ただ、成長をけん引する事業が見当たらない。エレクトロニクス部門で今期に増収を見込めるのは半導体くらい。金融や映画、音楽は安定しているが大きな伸びを期待しにくく、今期は各事業とも減益を見込む。一方で配信サービスの情報流出に伴う費用負担の増加や、テレビ事業の下振れが懸念される。成長性をいかに取り戻すかが課題といえる。

日経新聞