2010年4月29日木曜日

新興国向け専用家電、パナソニックが集中投入

12年度 20品、2~5割安

 パナソニックはアジアなど新興国市場向け専用家電の開発・販売に乗り出す。2012年度までに、現地の生活様式や商習慣に合わせて機能を絞り込んだ家電20品目以上を相次ぎ投入する。新興国での中間所得層の急増に対応、価格を既存商品に比べ2~5割程度安くしたボリュームゾーン(普及価格帯)商品で攻勢をかける。ソニーや東芝などほかの電機大手も新興国で事業拡大を急いでおり、日米欧向け商品を軸に世界市場を開拓してきた従来戦略の転換が一気に進む。

 中国、インドなどアジアの中間所得層は08年で9億人近くと、日本の人口のほぼ7倍に達している。日本に比べると所得水準は低いが、買い替えが主体の先進国に代わり世界消費のけん引役に育ってきた。日本勢は新興国で開発・生産の現地化を加速、市場開拓で先駆け既に高いシェアを握る韓国のサムスン電子やLG電子に対抗する。

 パナソニックの熱帯地域向け家電は緯度で南北15度程度までの東南アジアや南米などの地域を対象にする。商品投入先の現地法人の技術者らがシンガポールの家電子会社に集まり、野菜を冷やすスペースの大きい冷蔵庫などを開発。マレーシアやメキシコなどの工場で生産してコストを抑え、中近東やアフリカにも輸出する計画だ。

 大気汚染が社会問題となり始めた中国や東南アジアでは、イオン発生機能を搭載した空気清浄機を10年度内に商品化する。日本で人気の加湿や除湿の機能などを省き、価格は1万~2万円と既存商品の半額に抑える。

 パナソニックはさらにインドのエアコン新工場に研究開発や人材育成の拠点併設を検討するなど、開発・生産を新興国で完結できる体制づくりに取り組む。ODM(相手先ブランドによる設計・生産)事業者への委託を増やしてコスト競争力を高め、日本の半分程度の価格でも収益を確保できる体制を確立する。

 5月に発表する10~12年度の中期経営計画には、連結売上高に占める海外比率を55%(現在は約47%)に高める目標を盛り込む。新興国専用モデルの集中投入は目標実現に向けた最重点事業の一つとなる。

 新興国専用モデル開発はほかの国内電機大手も加速。ソニーは昨年末に32型で2999元(約4万円)という低価格の中国専用液晶テレビを投入。富士フイルムはアジアや南米などで100ドル以下のコンパクト型デジタルカメラを発売した。ソニーなどは電子機器の受託製造サービス(EMS)企業への生産委託などでコストを低減し、価格競争が激しい新興国で収益を得る事業モデルを構築し始めている。

 電機大手は専用モデル投入による新興国市場の開拓を最有力の成長戦略と位置付けるが、開発や生産機能の海外移転は避けられない。国内空洞化を回避するためには、環境・エネルギーなど新分野の育成や人員の再配置が急務になっている。

日経新聞
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